今回は「オンリーワン幻想」について触れたいと思います。「オンリーワン幻想」とは、恋愛対象に抱く、「自分を愛してくれる人は世界にこの人しかいない」「自分が本気で愛せる相手は世界にこの人しかいない」という幻想を指します。多くの人は、初恋の人や初めて付き合った(付き合うに至らずとも、初めて自分を受け入れてくれた)人に対して、こういう思いを抱いたことがあるはずです。


■恋愛におけるインプリンティング

生まれたばかりの動物が、目の前を動く物体を親として覚え込み、その後は本物の親に対するように追従し、一生愛着を示すインプリンティング(刷り込み)という現象があります。動物学者ローレンツが発見した雛鳥の例が有名ですね。恋愛における「オンリーワン幻想」は、このインプリンティングに似ています。端から見てると、到底似ても似つかない、ヘタすると生物ですらないモノを一生親と思い込んで慕う雛鳥と同じく、僕たち人間は、他にもたくさん魅力的な人がいるのに、いつまでも初恋の人や初めて付き合った人を引きずり続けます。それは本当に本能に近い性質なのかもしれません。とは言え、多くの人は数多の恋を経て、それが幻想だったことに気づきます。理性が本能を凌駕するのが、人間の人間たる所以です。ただ、サブカルこじらせ男子の場合、理想の異性の希少性が高いこと、経験する恋愛の絶対数が少ないことが影響して、この幻の世界からいつまでも抜け出せなくなりがちです。漫画(もしくはドラマ版)「モテキ」の主人公、藤本幸世はまさにこのドツボにハマッてましたね。


■付き合い始めてからが地獄

「モテキ」と言えば、漫画(もしくはドラマ版)の藤本幸世は、初めて自分の存在を受け入れてくれた女性である小宮山夏樹への幻想を終盤で断ち切ります。一方、映画の方では、趣味もルックスもドンピシャの理想の女性、松尾みゆきとの恋が成就(?)したところで終わります。両者を比較した場合、どちらが幸せかと聞かれたら、映画の方と答えてしまいそうになりますが、必ずしもそうとは限りません。映画のエンディングおける彼は幸せかもしれませんが、同時に地獄への入り口に立っているとも言えるからです。恋愛って成就するまでに色々と辛くて切ない思いしますけど、成就してからも苦労はしますからね。付き合ってからの方が独占欲が出て嫉妬深くなりますし、今まで知らなかった意外な一面に幻滅することだってあります。特にサブカルこじらせ男子は、恋愛の経験値が低いので、付き合ってからの方が自分のキャパを超えたトラブルの連続でしょう。映画の藤本幸世も、エンディングの後、松尾みゆきに散々振り回されまくった挙句、とんでもないトラウマを植え付けられている可能性大です。


■こっぴどく振られよう

ごく一部の人は、この人しかいないとインプリンティングされた人との恋が報われ、「それが今の嫁である」なんて幸せを手に入れるかもしれません。でも、大半の男女の恋愛に、そんなウマい話はなく、大失恋の後に「オンリーワン幻想」を断ち切るリハビリ期間が待っています。先に書きましたが、一般的には幾多の恋を経て、何度も失恋を繰り返すことで、自分の抱いた思いが妄想だったことに気づきます。今、自分が付き合っている(恋している)人は自分にとってベターな存在かもしれません。ひょっとすると、これまでの人生においてベストな存在かもしれません。でも、必ずしもオンリーワンとは言い切れません。仮にオンリーワンだとその時思っていても、その人と別れた後に必ず次のオンリーワンが訪れます。これは経験しないと絶対実感が沸かないと思います。だから、「オンリーワン幻想」を断ち切るには、たくさん情熱的な恋をして、その度にこっぴどく振られることだと言えます。


とても悲しい結論ですけど、割と多くの人が実生活で経験している話だと思います。僕の、と言うか多くのサブカル者にとって神レベルのカリスマである大槻ケンヂの特撮というバンドで「パティー・サワディー」という曲があります。この曲はサビで「愛って減っちゃうんだよ」って身も蓋もないことを歌ってるんですけど、それでもと言うか、それだからこそ「そうだ今が最高と俺ら転がっていこうぜ」と強がるのです。今が最高と誰が本当に言えるかわかんないですけどね。愛って減っちゃうし、それはみんな知ってるし、それって切ないけど、人と人との出会いってそういうものなのです。


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